結論

インボイス対応で使われてきた「2割特例」は期限があり、その後も“いきなり通常計算に戻る”のではなく、個人事業者向けに「売上税額の3割でよい」経過措置を2年間設ける方針が示されています。あわせて、免税事業者からの仕入れに関する経過措置(控除できる割合)も、2026年10月以降の扱いが見直される予定です。まずは「自分が売り手なのか、買い手なのか」で影響点を分けて把握すると迷いません。

この記事から分かること

  • 2割特例の“何が終わる”のか、いつまで使えるのか
  • 個人事業者の「3割特例(2年限定)」で何が変わるのか
  • 免税事業者からの仕入れの控除割合がどう動くのか(2026年10月以降)
  • 今からやるべきチェック(会計ソフト設定・見積り・請求書の運用

背景

インボイス対応は「登録したら終わり」ではなく、経過措置の期限が来るたびに、税額計算と取引先対応がじわじわ変わります。 特に小規模事業者は、納税額そのものより「計算が面倒になった」「急にキャッシュが足りない」が先に問題になります。期限を“自分の申告タイミング”に落とし込んでおくと、焦らずに済みます。

ここがポイント

1) 2割特例は「納税額=売上税額の2割」で済む“簡略ルール”

2割特例は、インボイス制度を機に免税事業者から課税事業者(インボイス発行事業者)になった小規模事業者向けの負担軽減です。 本則計算のように仕入税額控除を細かく積み上げなくても、売上にかかる消費税額のうち“8割を控除”した形になり、結果として納税額が売上税額の2割になります。

2) その次に来るのが、個人事業者の「3割特例(2年限定)」

税制改正大綱の概要では、2割特例の終了後も、個人事業者について「納税額を売上税額の3割にできる措置」を2年に限って講ずる方針が示されています(令和9年分・令和10年分)。 ざっくり言うと、2割 → 3割に“少し負担が増える”ものの、いきなり通常計算に戻るよりは段階を踏む、という設計です。

3) 買い手側は「免税事業者からの仕入れの控除」が論点になる

インボイス制度では、免税事業者などからの仕入れは本来、仕入税額控除ができません。ただし激変緩和として、一定期間は一定割合(これまでの制度では80%・50%)を控除できる経過措置があります。 大綱の概要では、この経過措置について、2026年10月以降の控除割合を「7割→5割→3割」と段階的に縮めつつ、期限を延ばす方針が示されています。さらに、免税事業者ごとの年間の適用上限仕入額を引き下げる(10億円→1億円)方向も示されています。

具体的にどうするか(手順・チェックリスト・比較軸)

1) まず「自分はどっち寄りか」を決める(売り手/買い手)

  • 売り手(請求する側):2割特例の適用状況、次に3割特例を使えるかが中心
  • 買い手(支払う側):免税先からの仕入れがどの程度あるか、控除の変更が中心
両方やっている人(副業・小規模事業)は、影響の大きい方から手を付けると崩れません。

2) 売り手:いま使っている“計算ルール”を確認する

会計ソフトや申告書の控えで、次のどれで申告しているかを確認します。
  • 2割特例
  • 簡易課税
  • 本則課税(通常)
2割特例で回していた人ほど、次の制度に備えて「納税額が増えた場合の資金繰り」を先に作るのが効果的です。

3) 売り手:3割特例は“使える人・使えない人”が出る前提で準備する

大綱は方針なので、最終の適用条件・開始時期は法令と国税庁の案内で確定します。 現時点では「個人事業者向けに2年」という方向性を前提に、次の準備をしておくと後が楽です。
  • 月次で「預かり消費税」を別口座で分ける(資金ショート予防)
  • 見積・単価の作り方を固定(税抜/税込の表記ブレをなくす)
  • 取引先に出す請求書のテンプレを統一(登録番号・税区分)

4) 買い手:免税先への支払いを“棚卸し”する

買い手側は、免税事業者からの仕入れがどれくらいあるかがすべてです。
  • 免税先の取引先をリスト化
  • 年間の支払額をざっくり集計
  • 代替(課税事業者への切替/価格交渉/内製化)が可能かを整理
控除が下がってから慌てる」より、取引先の構造を先に見える化した方が安くつきます。

5) 会計ソフトの設定は“税”より先に「経過措置の区分」を確認する

免税仕入れの経過措置は、同じ10%取引でも“控除できる割合”が違うので、区分の選択ミスが起きやすいです。 アップデート時に、仕訳の税区分が勝手に変わっていないか(インボイス経過措置の選択が残っているか)を一度だけ点検しておくと安心です。

よくある誤解(ある場合のみ)

  • 2割特例が終わったら、すぐに税額計算が地獄になる
個人事業者には“段階を踏む”方向(3割特例)が示されています。いきなり最難関に戻る、と決め打ちしない方が安全です。
  • 免税事業者との取引は、明日から全部アウト
経過措置があるため、一定期間は一部控除が認められる枠組みがあります。ただし控除が下がるほど負担は増えるので、放置は危険です。
  • どうせ制度が変わるから、今は何もしない
影響が大きいのは「資金繰り」と「取引先対応」です。ここは制度が確定する前でも準備できます。

注意点(必ず簡潔)

税制改正大綱は方針であり、適用時期や要件は法令成立と国税庁の公表で確定します(本記事は一般情報であり、個別の税務判断は税理士等の専門家にご相談ください)。

まとめ(行動に落とす一言で締める)

2割特例の“その次”は、個人事業者の3割特例(2年)と、免税仕入れの控除見直しが軸になります。売り手・買い手で影響点を分け、取引先の棚卸しと資金繰りだけ先に整えておくと、制度が確定してからの動きが速くなります。